古酒としてのウィスキーを味わう


3月中旬から東京に来ていて、コロナ自粛、緊急事態宣言などをやり過ごす中で、家の納戸の整理をしていたら、数多くのいわゆる「古酒」と言われるリカー類を発見した。中には現行価値として6万円を超えるコニャックなんかも出て来たんだけど、とりあえずそれらの中から4種類を選んで飲んでみることにした。最近は血糖値を気にするようになってビールやワインはもっぱら飲まなくなったから、晩酌といえばウィスキーやブランデーばっかり。なのでちょーど良い!

で、この写真にあるサントリーロイヤルなんだけど、いろいろ調べてみたら、なんとすごいお酒だという事が判明したので、思わずブログる事にしたという訳。

今でこそ世界に知られる日本のサントリーは、創業当時は寿屋と言い、日本の洋酒産業の草分けでも有る鳥井信治郎氏が起こした会社だ。その寿屋がサントリーに進化してから迎えた創業60周年記念を記念して、1960年に当時のラインナップの最高峰として、つまりフラッグシップとして発売にされたのがこれ、「サントリーロイヤル60」。もちろんブレンドをしたのは鳥井信治郎氏本人。写真のボトルは推定で1970年代中期に発売されたもので、ボトルの首に「ウィスキー特級」の表示が有り、襷の住所は大阪市北区堂島浜と記されている。昭和の荒波の中で目紛しい経済発展と社会の変貌と共に業績を伸ばして来たサントリーが、その黎明期とも言える昭和35年に発表した作品なのだから、マスターブレンダーとしての鳥井さんも全身全霊を注いで取り組んだに違いない。

すこーしだけ痩せ始めているコルク栓を開ける前に、ゴールドのテープを切る作業がある。これがまた発売当時でも決して安価とは言えなかった、ちょっとした贅沢品を開けるのだというささやかな優越感を喚起させてくれるのだ。昭和の茶の間のおそらく買ったばかりのテレビジョンの前で、一家の主人がこの作業をしては「世界は良い方向へ動いている」とか思いつつひそやかな満足感を得る。そんな時の定番アイテムがこれだったに違いない。

そんなことはさて置き、さっそく味わってみよう。まずはストレートで。スモーキー感は殆ど無い。第一印象は「甘さ」だ。しかも富士リンゴや白桃のような、まったり感はないが確実に甘いと分かる透明感のある甘さ。それと同時に桜のカスクだろうか、豊潤なウッドの香りが鼻の奥を通り抜ける。口に含んだ琥珀の液体は、それらの印象を素直に実感させる味わいである。喉から鼻に抜ける香りの中にはシナモンのような要素も。最近の日本のウィスキーに見られる繊細な複雑さはあまり感じない。いやむしろあえてその真逆のシンプルさを、ストレートに表現したかったのではないかと思わせる力強ささえを感じるようだ。次に氷を入れてみる。液体の温度が馴染むまでしばらく待ってから口に含む。この時の驚きは、確実に増し来ているその甘さに対して。もしかしたらこの酒は、ブレンドの時点で水割りやロックで飲むことを前提としていたのではないかとも思わせるようだ。鳥井さんという人、只者ではなかったのだと実感。この時、マスカットを足して割ったかのようなジューシー感を持ちつつすっきりと喉を通る酒は、多くの人を満足させるに足りるフラッグシップの存在感をじんわりと痛感させるのだ。

僕は決して量を飲む方ではないが、このロイヤルは一杯では決して足りない。さてさて、硬い話はここらで止めにして、2杯目を注いだらポストコロナのプランでも考えようかなっと!


やっぱり追加で; 
同じく写真中のサントリーブランデーVSOP、これも相当やばいヤツ。これってもしかしたら45年振り位に飲んでるかも。こんなに美味かったんだ!って驚いたのが実のところ。ブランデーも日本人の手にかかるとここまでまろやかになれるんだと思うのと、実はブランデーは梅酒の延長線上にあったんだと認識させられるよう。改めて、鳥井さんに脱帽っす。

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