日本の珈琲豆、新事情


先日2週間だけ日本に居る間に、5軒の珈琲豆自家焙煎のお店を回ることができて、それぞれのお店で数種類の豆を買ってみた。今日はそれらの豆の感想と、シアトルに帰国後に再発見した事実を書いてみよう。

まず、5軒のお店の中で4軒は個人経営の非常にこじんまりとした店構えの店舗。だけど、そのどれもが珈琲豆に関するこだわりやうんちくはしっかりと持っている、いわゆるスペシャルティー•コーヒーを扱うお店で、(中にはあまりお話をしたがらないご主人もいたけど)僕が尋ねる生産地や豆の特色に関する質問に熱心に答えてくれた。初めてやあまり馴染みのないお店の場合僕は大抵、店員さんとのやりとりの中から購入する豆を決めていくのがいつものやり方。今回はお店の名前や所在地は明記しないけど、購入した豆は以下の4種類。

  • インド、ケララ地方、ナチュラル•プロセス、アラビカ種
  • エル•サルバドル、エル•カルメン農場、100%パカマラ
  • ルワンダ、ワッシュド、(豆の品種は忘れた)
  • メキシコ、オハカ地方、ワッシュド、カチュラ&ブルボン
あえてここではそれらの豆の批評的な事は書かずに、全てをテイスティングした結果の総評的な感想だけをお伝えしたいというのが今日の主題。

当然、購入してすぐに全てをテイスティングしたし、その後も毎日にように少しづつ飲んでみた。そしてその後、シアトルに帰国後改めて全種類をテイスティング。そこで発覚した驚愕の事実! どの珈琲豆においても、日本で飲むよりもシアトル(厳密にはマーサー•アイランド市という、隣接する街)で飲むほうが確実に美味しいという事実。

その理由を色々考察してみたが、行き着く答えは一つしかない。それは「水」の違い。基本的に「美味い」と感じた大きな要素は、こちらで飲む場合は「甘み」が一層引き出されているからだと気付いた。淹れ方はどちらでも同じだし、豆の挽き具合も殆ど同じ。そこで思い出したのが、以前雑誌の取材で話した地元当局の水道局の所長さんのお話だ。このエリア(シアトルを中心とするピュージェット湾地域)では塩素系の化学物質は使わずに、もともと山に積もった雪解け水を水源とし、UVと鉱物の天然濾過で綺麗な水質を形成するという「天然系」浄水システムを導入しているという内容だった。なるほどね! 天然ミネラル分が多いお水だから、甘みがより前面に出てくるんだ! 納得。

もう一点の気付いた点は、上記の4種の豆全てが僕の評価で(6から10までを15段階で表すやり方)7点台だった事。類似の豆は多くのこちらのロースターも扱っているから、これまで何度もテイスティングした経験は有り、どれも大体の味のプロファイルは分っている。あえて言えば、ルワンダとエル•サルバドルの豆はまあまあのインップレッションだったけど、インドとメキシコは正直言ってガッカリの品質だ。

この結果をもたらした大きな要因は二つ考えられる。

一つは、生豆の輸入業者の力。ここ数年の間に相当数が増えたはずの珈琲生豆輸入業者の中で、本当に質の高い豆を購入できるのは、実は限られた数社しかいないということかもしれない。業者の目利き力だったり、カッピング評価点の高い(したがって高卸価格)生豆の購買力だったりとかが最終的品質まで反映されてしまう。

二つ目は、焙煎方法とそのスピード。最近の焙煎屋さん達は、お客さんに豆を選ばせて、12〜13分以内にその場で焙煎して梱包するといった売り方を”売り”にしている所が多い。お客さんにとっても「焙煎仕立て」だから「素晴らしい」となるのだろう。しかし残念ながら、私のこれまでの経験から、コーヒー豆の焙煎は決して慌ててはいけなく、豆の質や特色を徹底的に見極めた上で最適な焙煎時間や温度管理を決め、じっくりと焙煎するのが最適なやり方と理解している。それを踏まえた上で上記4種の味を分析すると、インドとメキシコの豆は、焙煎度合いが不均等で、豆の中心部にエチレンガスなどの「生」の部分が残されていた時の味わいだったのである。

上の評価とはちょっと違うけど、焙煎した珈琲豆が最もお美味しいのは、焙煎後24時間経った時らしいよ。これ本当、僕も何度も実験したから間違いない!

「急がば回れ」なんだよなぁ、やっぱり!

ちなみに、写真の焙煎機はガス火を使う日本製の機械だけど、かなりの高性能!

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